インフルエンサーマーケティングとアンバサダーマーケティングの違い

インフルエンサーマーケティングとアンバサダーマーケティングは、どちらも影響力のある人物を起用する手法ですが、その目的や役割には明確な違いがあります。
この記事では、それぞれの基本的な違いから、目的、費用、選び方までを徹底比較し、自社に最適な施策を見つけるためのポイントを解説します。
両者の特性を正しく理解し、マーケティング効果を最大化させましょう。
そもそもインフルエンサーマーケティングとはどのような施策なのか、メリットやデメリットを整理した記事もあります。詳しくはインフルエンサーマーケティングとは?メリット・デメリットを紹介をご覧ください。
インフルエンサーとアンバサダーの基本的な役割の違い
インフルエンサーとアンバサダーの最も基本的な違いは、その役割にあります。
インフルエンサーは広範囲への「影響力」と「拡散力」を重視される一方、アンバサダーはブランドへの深い「愛情」と「共感」に基づいた活動が求められます。
この根本的な役割の違いが、目的や起用する人物、期間などの違いにつながっていきます。
まずは、両者の役割の違いを表で確認しましょう。
項目 | インフルエンサー | アンバサダー |
---|---|---|
役割 | 情報の拡散、トレンドの創出 | ブランドの代弁、ファンコミュニティの形成 |
重視される要素 | フォロワー数、リーチ力、影響力 | ブランドへの愛、熱意、信頼性 |
発信の主体 | 個人の視点・感想 | ブランドの「顔」としての視点 |
インフルエンサー:影響力・拡散力を重視
インフルエンサーマーケティングで最も重視されるのは、その名の通り「影響力(インフルエンス)」です。
特定の分野で多くのフォロワーを抱え、強い影響力を持つ人物が商品やサービスを紹介することで、短期間で多くの人々に情報を届けることができます。
彼らの役割は、トレンドを作り出し、情報を広く拡散させることです。
例えば、新作コスメを人気美容系YouTuberが紹介すれば、発売直後から大きな話題となり、購買意欲を一気に高める効果が期待できます。
このように、インフルエンサーは第三者としての客観的な視点から商品を紹介するため、消費者にとって信頼性が高く、広告感が薄れるというメリットもあります。
そのため、新商品のローンチや大規模なキャンペーンなど、短期集中で認知度を高めたい場合に非常に有効な手法です。
インフルエンサーのタイプごとの特徴についてはインフルエンサーの種類と特徴で詳しく解説しています。
アンバサダー:ブランド愛・共感を重視
アンバサダーマーケティングでは、「ブランドへの深い愛情」と「共感」が最も重要な要素となります。
アンバサダーは、もともとそのブランドや商品の熱心なファンであり、その魅力を自らの言葉で語る「ブランドの代弁者」です。
彼らの役割は、単に商品を宣伝することではなく、ブランドの世界観やストーリーを伝え、他のファンとの共感を深め、コミュニティを形成していくことにあります。
そのため、アンバサダーの発信する情報には強い熱意と説得力が伴い、受け手との間に深い信頼関係を築くことができます。
例えば、あるアウトドアブランドの長年の愛用者がアンバサダーとなり、製品の使い心地やブランドへの想いを継続的に発信することで、フォロワーはより強い親近感と信頼感を抱くようになります。
このように、ブランドの真の価値を伝え、長期的なファンを育成する上で、アンバサダーは欠かせない存在です。
目的の違い
インフルエンサーマーケティングとアンバサダーマーケティングでは、達成したい目的が大きく異なります。
インフルエンサーは、新商品やキャンペーンの認知を爆発的に広げる「短期的な話題づくり」を得意とします。
一方、アンバサダーは、ブランドの価値を深く伝え、顧客との継続的な関係を築く「長期的なファン育成」を目的とします。
施策を検討する際は、自社の目的がどちらに近いのかを明確にすることが重要です。
項目 | インフルエンサー | アンバサダー |
---|---|---|
主な目的 | 認知度向上、販売促進、話題化 | ブランドロイヤルティ向上、ファン育成、信頼構築 |
時間軸 | 短期的・即時的 | 長期的・継続的 |
得意なフェーズ | 認知・興味関心 | 比較検討・購買・ファン化 |
インフルエンサー:短期的な認知拡大・話題づくり
インフルエンサーマーケティングの主な目的は、短期間での認知拡大と話題づくりにあります。
数万人から数百万人規模のフォロワーを持つインフルエンサーを起用することで、新商品やサービスの情報を一気に拡散させることが可能です。
特に、発売直後の商品や期間限定のキャンペーンなど、スタートダッシュが重要な場面でその効果を最大限に発揮します。
インフルエンサーの投稿は「バズ」を生みやすく、SNS上でトレンドになることで、想定以上のユーザーにリーチできる可能性も秘めています。
また、インフルエンサーが持つ「今、話題になっている」というイメージは、消費者の購買意欲を直接的に刺激します。
このように、即時性の高い成果を求める場合や、市場に新しいインパクトを与えたい場合には、インフルエンサーマーケティングが最適な選択肢となるでしょう。
アンバサダー:長期的なファン育成・信頼構築
アンバサダーマーケティングの目的は、ブランドと顧客との間に長期的で深い関係性を築き、熱心なファンを育成することにあります。
アンバサダーはブランドの「顔」として、その魅力やストーリーを継続的に発信し続けます。
この一貫した活動を通じて、消費者はブランドに対して親近感や信頼感を抱き、単なる消費者から熱心なファンへと変化していきます。
また、アンバサダーの発言は、ブランドへの愛情に裏打ちされているため、非常に説得力があります。
この信頼性の高い情報発信は、ブランドイメージの向上や、顧客ロイヤルティの醸成に直結します。
短期的な売上増だけでなく、LTV(顧客生涯価値)の向上や、炎上リスクの低い安定した企業成長を目指す上で、アンバサダーの存在は極めて重要です。
起用する人物の違い
インフルエンサーとアンバサダーでは、起用する人物の選定基準が根本的に異なります。
インフルエンサーは、リーチできる範囲の広さが重要視されるため、「知名度」や「フォロワー数」が主な選定基準となります。
一方、アンバサダーはブランドの代弁者であるため、起用以前からそのブランドを愛用している「既存のファン」から選ばれるのが一般的です。
また、契約形態における専属性の有無も大きな違いと言えるでしょう。
項目 | インフルエンサー | アンバサダー |
---|---|---|
選定基準 | フォロワー数、エンゲージメント率、ターゲット層との一致 | ブランドへの愛情、製品知識、熱意 |
関係性 | プロジェクト単位のビジネスパートナー | 長期的なパートナー、ブランドファミリーの一員 |
契約の専属性 | 低い(他社製品もPRすることが多い) | 高い(競合他社のPRは基本的に行わない) |
インフルエンサー:知名度・フォロワー数で選定
インフルエンサーを選定する際、最も重要な指標となるのがフォロワー数やエンゲージメント率です。
どれだけ多くのユーザーに情報を届けられるかという「リーチ力」が、インフルエンサーマーケティングの成果に直結するためです。
そのため、自社のターゲット層と親和性の高いフォロワーを多く抱えている人物が起用されます。
必ずしも、そのインフルエンサーが以前から商品やサービスを愛用している必要はありません。
企業はインフルエンサーの影響力(広告媒体としての価値)に対して対価を支払うというビジネスライクな関係性が基本です。
もちろん、起用するインフルエンサーがブランドに対して好意的なイメージを持っていることは重要ですが、選定の決め手はあくまでも「どれだけ多くのターゲットに情報を拡散できるか」という点になります。
アンバサダー:既存のブランド愛用者から選定
アンバサダーは、原則として「既存のブランド愛用者」の中から選ばれます。
彼らは金銭的な報酬がなくても、自発的にブランドの魅力を発信してくれるような熱心なファンです。
企業は、SNSやイベントなどを通じてそうしたファンを見つけ出し、「公式アンバサダー」として任命します。
アンバサダーの選定基準はフォロワー数ではなく、ブランドへの愛情の深さ、製品知識の豊富さ、そしてブランドの世界観を体現しているかどうかです。
たとえフォロワー数が少なくても、その発言に熱意と信頼性があれば、アンバサダーとして十分に活躍できます。
彼らはブランドと一体となり、その魅力を「自分の言葉」で語るため、他の消費者から深い共感と信頼を得ることができるのです。
契約における独占性・専属性の有無
契約における独占性・専属性の有無も、両者の大きな違いです。
インフルエンサーは、特定のブランドに縛られることなく、様々な企業の製品やサービスをPRするのが一般的です。
例えば、ある投稿でA社の化粧品を紹介し、次の投稿でB社の化粧品を紹介することも珍しくありません。
彼らはあくまで第三者の視点から商品をレビューするため、その自由度が担保されています。
一方、アンバサダーはブランドの「顔」としての役割を担うため、契約期間中は競合他社の製品をPRしないといった「専属契約」を結ぶことがほとんどです。
これにより、アンバサダーの発信する情報の一貫性と信頼性が保たれます。
消費者は「あの人は本当にこのブランドが好きなんだ」と認識し、より強い信頼を寄せるようになります。
費用・期間・成果指標の違い
マーケティング施策として導入する上で、費用や契約期間、そして成果を測る指標の違いは非常に重要です。
インフルエンサーは投稿単位やキャンペーン単位での短期契約が多く、費用もそれに準じます。
対してアンバサダーは、年単位の長期契約が基本で、継続的な報酬体系となることが一般的です。
成果指標も、即時的な数値を追うか、長期的な価値を測るかで大きく異なります。
項目 | インフルエンサー | アンバサダー |
---|---|---|
費用形態 | フォロワー単価、投稿単価、成果報酬型など | 月額・年俸制、インセンティブ、商品提供など |
契約期間 | 単発〜数ヶ月 | 半年〜数年単位 |
成果指標(KPI) | リーチ数、インプレッション数、エンゲージメント率、UGC数、指名検索数 | LTV、NPS、ブランドイメージ調査、コミュニティ参加率 |
インフルエンサー:短期・単発のキャンペーン費用
インフルエンサーマーケティングの費用は、主に「フォロワー単価」で計算されることが多く、一般的に「フォロワー数 × 2円〜4円」が相場とされています。
例えば、10万人のフォロワーを持つインフルエンサーに1投稿を依頼する場合、20万円〜40万円が目安となります。
契約はキャンペーン期間中のみなど、短期・単発であることがほとんどです。
そのため、必要なタイミングで必要な分だけ予算を投下することが可能で、費用対効果の検証がしやすいというメリットがあります。
その他にも、動画制作の場合は再生回数に応じた成果報酬型や、複数のインフルエンサーを起用するパッケージプランなど、様々な料金体系が存在します。
いずれにせよ、その影響力に対して対価を支払う、広告出稿に近い考え方と言えるでしょう。
アンバサダー:長期契約での継続的な報酬
アンバサダーマーケティングは、長期的な関係性を前提とするため、費用形態も継続的なものになります。
月額制や年俸制での報酬が一般的ですが、金銭的な報酬だけでなく、新商品の提供や限定イベントへの招待、活動サポートといった非金銭的なインセンティブを組み合わせるケースも多く見られます。
これは、アンバサダーの活動がブランドへの愛情に基づいているため、報酬以上に「特別な体験」や「ブランドとの強いつながり」がモチベーションになるからです。
契約期間は最低でも半年から1年以上と長期にわたります。
短期的な施策と比較するとまとまったコストが必要になりますが、ブランドの資産となる熱心なファンコミュニティを形成できるため、長期的な視点で見れば非常に価値のある投資と言えます。
成果指標:即効性か、持続性か
成果指標(KPI)にも明確な違いが現れます。
インフルエンサーマーケティングでは、施策の即効性を測る指標が重視されます。
具体的には、投稿がどれだけの人に届いたかを示す「リーチ数」や「インプレッション数」、どれだけの反応があったかを示す「エンゲージメント率(いいね、コメント数など)」、そして商品購入やサイトへの遷移数を示す「コンバージョン数」などが主なKPIとなります。
一方、アンバサダーマーケティングでは、持続的なブランド価値の向上を測る指標が重要です。
顧客が長期的にどれだけの利益をもたらすかを示す「LTV(顧客生涯価値)」や、ブランドへの愛着度を測る「NPS(ネットプロモータースコア)」、さらにはブランドイメージ調査などがKPIとして設定されます。
これらの指標は、短期的な売上だけでなく、企業の持続的な成長を測る上で欠かせません。
施策の成果を測る際のKPIや効果測定の方法はインフルエンサーマーケティングの効果測定を参考にしてください。
自社に合う施策の選び方
結局のところ、自社にはどちらの施策が合っているのでしょうか。
その判断は、まず「目的」を明確にすることから始まります。
短期的な認知拡大を目指すのか、長期的なファン育成をしたいのかで、選ぶべき道は大きく変わります。
さらに、利用できる「予算・期間・リソース」や、「ターゲットとの関係性」をどう構築したいのかも重要な判断基準となります。
これらの要素を総合的に比較検討し、自社の現状に最適な手法を選択しましょう。
判断基準 | インフルエンサー向きの企業 | アンバサダー向きの企業 |
---|---|---|
目的 | 新商品のローンチ、期間限定キャンペーンで一気に話題を作りたい | ブランドのファンを増やし、LTVを向上させたい |
予算・リソース | 短期集中で予算を投下できる。スポットでの施策を打ちたい | 継続的な予算確保が可能。長期的なコミュニティ運営のリソースがある |
ターゲット | トレンドに敏感な若年層に広くアプローチしたい | 特定の価値観を持つ層と深く、長期的な関係を築きたい |
目的(認知拡大かファン育成か)で選ぶ
施策を選ぶ上で最も重要なのが、マーケティングの目的を明確にすることです。
もしあなたの会社の課題が「新商品の知名度が低く、まずは多くの人に知ってもらいたい」ということであれば、インフルエンサーマーケティングが適しています。
影響力のあるインフルエンサーを起用し、短期間で集中的に情報を拡散することで、認知度の課題を効率的に解決できるでしょう。
一方で、「既存顧客のリピート率が低く、ブランドへの愛着を深めてほしい」という課題であれば、アンバサダーマーケティングが有効です。
熱心なファンであるアンバサダーを通じてブランドの魅力を深く伝えることで、顧客ロイヤルティを高め、長期的な関係性を築くことができます。
まずは自社のKGI・KPIを再確認し、どちらの目的が優先されるべきかを判断しましょう。
予算・期間・リソースで選ぶ
現実的な問題として、予算やかけられる期間、そして社内の運用リソースも重要な選択基準です。
インフルエンサーマーケティングは、キャンペーン単位での発注が可能なため、比較的少ない予算からでもスタートできます。
施策の期間も短く、効果測定もスピーディーに行えるため、PDCAを素早く回したい場合に適しています。
一方、アンバサダーマーケティングは長期契約が基本となるため、継続的な予算確保が必要です。
また、アンバサダーとの良好な関係を維持し、コミュニティを活性化させるためには、専任の担当者を置くなど、安定した運用リソースが求められます。
自社の体力や体制を考慮し、無理なく継続できる施策を選ぶことが成功の鍵となります。
ターゲットとの信頼性を重視するかで選ぶ
最終的に、ターゲット顧客とどのような関係を築きたいのかも考慮しましょう。
インフルエンサーによる紹介は、トレンド感や話題性があり、多くの人々の興味を惹きつけます。
しかし、あくまで第三者としてのおすすめであるため、その情報が長期的な信頼に直結するとは限りません。
もし、顧客一人ひとりと深く向き合い、心からの信頼関係を築きたいのであれば、アンバサダーマーケティングが最適です。
ブランドへの愛情を持つアンバサダーの言葉は、広告を超えた「本物の声」としてターゲットの心に響きます。
この深い信頼関係は、価格競争に巻き込まれない強いブランドを構築するための土台となります。
自社のブランドが提供したい価値と照らし合わせ、最適なアプローチを選択してください。
まとめ
インフルエンサーマーケティングとアンバサダーマーケティングは、似ているようで全く異なるアプローチです。
インフルエンサーが「短期的な拡散力」で認知を広げるのに対し、アンバサダーは「長期的なブランド愛」でファンの輪を広げていきます。
両者の違いを正しく理解し、自社の「目的」「予算」「ターゲットとの関係性」に合わせて最適な手法を選択することが、マーケティング成功の鍵となります。
この記事で解説した比較ポイントを参考に、自社の成長を加速させる一手を見つけてください。
場合によっては、両者を組み合わせるハイブリッドな戦略も有効です。
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