インフルエンサーのキャスティング⑤最終決定と契約

インフルエンサーのキャスティング⑤最終決定と契約

インフルエンサーのキャスティングにおける最終フェーズは、候補者との最終的な合意形成と法的な契約締結です。

ここでの丁寧な進行が、後のトラブルを未然に防ぎ、キャンペーンの成果を最大化する鍵となります。

社内でのコンセンサス形成から、具体的な投稿条件の交渉、そして契約書の締結まで、慎重に進めるべき重要なステップを解説します。

インフルエンサーのキャスティングの流れを確認したい場合はこちらの記事をご覧ください。

目次

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社内合意を得る

インフルエンサーを最終決定し契約に進む前には、必ず社内の関係部署や役職者からの合意を得るプロセスが不可欠です。

目的や予算の妥当性、潜在的リスクを事前に共有し、全社的なコンセンサスを形成することで、プロジェクトをスムーズに進行させることができます。

ここでは、円滑な社内合意形成のための3つの重要なポイントを解説します。

目的と予算を明確に提示する

社内合意を得るためには、まず「何のために、いくらで、誰を起用するのか」を明確に提示する必要があります。

キャンペーンの目的(例:新商品の認知度向上、ウェブサイトへの流入数増加など)を具体的なKPIと共に示しましょう。

予算については、インフルエンサーへの報酬だけでなく、企画費、制作費、代理店手数料などの内訳を詳細に記載し、費用対効果を分かりやすく説明することが重要です。

これにより、関係者は投資の妥当性を判断しやすくなり、承認を得やすくなります。

曖昧な説明は承認プロセスの遅延や、後々の認識のズレにつながるため、具体的で客観的なデータに基づいた資料を準備しましょう。

ステークホルダーからの反対意見を事前に吸収する

プロジェクトに関わるステークホルダー(関係者)は、それぞれ異なる視点や懸念を持っています。

例えば、営業部門からは売上への直接的な貢献度、法務部門からはコンプライアンス上のリスク、広報部門からはブランドイメージとの整合性など、様々な観点から意見が出ることが予想されます。

これらの反対意見や懸念点を事前にヒアリングし、想定される質問への回答を準備しておくことが重要です。

各部門の懸念に真摯に耳を傾け、データや過去の事例を基に丁寧に説明することで、不安を解消し、プロジェクトへの協力体制を築くことができます。

反対意見を放置せず、事前に吸収する姿勢が、円滑な合意形成につながります。

リスク・法務チェックを含む社内レビューを完了する

インフルエンサーの起用には、ステルスマーケティング規制違反や、過去の言動による炎上リスクなど、様々なリスクが伴います。

候補者のSNS投稿内容や過去の活動を調査し、ブランドイメージを損なう可能性がないかを慎重に評価する必要があります。

このリスク評価の結果と、契約書案を合わせて法務部門に提出し、法的な観点からのレビューを受けましょう。

景品表示法や特定商取引法などの関連法規に抵触しないか、契約内容に不利な点はないかなど、専門的なチェックを受けることで、企業としてのリスクを最小限に抑えることができます。

このプロセスを完了させて初めて、インフルエンサー側との契約交渉に進むことができます。

最終条件のすり合わせ

社内での合意が得られたら、次はインフルエンサーまたは所属事務所との間で、具体的な業務内容や条件の最終的なすり合わせを行います。

口頭での確認だけでなく、全ての合意事項を書面に残すことが後のトラブルを避けるために極めて重要です。

投稿内容の詳細から競合排除の範囲まで、細部にわたって両者の認識を一致させていきましょう。

投稿頻度・回数を具体化する

キャンペーンの成果を最大化するためには、投稿の頻度と回数を具体的に定める必要があります。

「Instagramでフィード投稿を2回、ストーリーズ投稿を3回」のように、プラットフォームごとに投稿形式と回数を明確に合意しましょう。

また、投稿のタイミングも重要です。

新商品の発売日やセール期間など、キャンペーン全体のスケジュールに合わせて、「〇月〇日と〇月〇日に投稿」といった形で具体的な日程を決めます。

投稿案の提出期限や、企業側の確認・修正依頼のスケジュールも事前に共有しておくことで、スムーズな進行が可能になります。

これらの詳細を曖昧にせず、契約前にしっかりと書面でFIXさせることが不可欠です。

競合制限・業種範囲を明確に定める

インフルエンサーが契約期間中、あるいは契約終了後一定期間、競合他社のプロモーションを行わないように「競合制限」を設けることは一般的です。

この際、トラブルを避けるために「競合」の定義を具体的にする必要があります。

例えば、化粧品メーカーであれば「他の化粧品ブランド全般」を対象とするのか、「特定の価格帯のスキンケアブランドのみ」とするのか、その範囲を明確に定めます。

業種範囲も同様に、「美容業界」「アパレル業界」といった広範な指定ではなく、具体的な企業名やブランド名をリストアップして合意することが望ましいです。

この条項はインフルエンサーの活動を制限するため、範囲や期間については、双方にとって妥当な条件を見つけるための交渉が必要です。

変動条件(スケジュール遅延や修正回数等)について合意する

プロジェクト進行中には、予期せぬ事態が発生することもあります。

例えば、インフルエンサー側の都合で投稿スケジュールが遅延した場合の対応や、企業側の都合で投稿内容の修正を依頼する場合のルールを事前に決めておくことが重要です。

具体的には、投稿内容の修正依頼は「原則2回まで」とし、それ以降は追加費用が発生する、といった取り決めをします。

また、スケジュール遅延が発生した場合のペナルティや、遅延が許容される条件(天災や急病など)についても合意しておくと、いざという時に冷静に対処できます。

こうした変動要因に関するルールを明確にすることで、円滑な協力関係を維持しやすくなります。

契約書の作成・締結

社内合意とインフルエンサーとの条件交渉が完了したら、最終ステップとして契約書を作成し、締結します。

これまでの合意内容をすべて網羅し、法的に有効な形で書面化する重要なプロセスです。

報酬の支払い条件から知的財産権の帰属まで、曖昧な点を一切残さないよう、細心の注意を払って作成・確認作業を進めましょう。

報酬・支払条件を明確に規定する

契約書において、金銭に関する項目は最も明確に規定すべき点の一つです。

報酬の総額はもちろん、その内訳(投稿料、企画料、素材買い取り料など)も記載するとより丁寧です。

支払いのタイミングについては、「契約締結時に50%、全投稿完了後に50%」といった分割払いや、「業務完了月の翌月末払い」といった期日を具体的に明記します。

支払い方法(銀行振込など)や、振込手数料をどちらが負担するのかも忘れずに記載しましょう。

源泉徴収の有無についても事前に確認し、必要であればその旨を契約書に盛り込むことで、後の税務上のトラブルを防ぐことができます。

知的財産権・二次利用範囲を取り決める

インフルエンサーが作成した投稿(テキスト、画像、動画など)の著作権は、原則としてインフルエンサー本人に帰属します。

そのため、企業がその投稿を自社のウェブサイトやSNS広告、パンフレットなどで再利用(二次利用)したい場合は、その許諾を契約で得ておく必要があります。

契約書には、二次利用が可能な媒体(例:ウェブサイト、SNS公式アカウント、デジタル広告)、利用期間(例:投稿日から1年間)、利用地域(例:日本国内)を具体的に明記します。

無断での二次利用は権利侵害となり、大きなトラブルに発展する可能性があるため、利用したい範囲を事前にすべて洗い出し、明確に合意しておくことが極めて重要です。

契約期間及び更新・終了条件を明示する

契約の有効期間を明確に定めることは、契約書の基本です。

「契約締結日から〇年〇月〇日まで」のように、具体的な開始日と終了日を記載します。

長期的な関係を視野に入れる場合は、契約の更新に関する条項も必要です。

「期間満了の1ヶ月前までにいずれか一方から申し出がない場合、同一条件で1年間自動更新する」といった自動更新条項や、更新時の条件見直しについて定めます。

また、契約違反や信頼関係を損なう行為があった場合に契約を解除できる条件(中途解約条項)や、その際の手続きについても明記し、万が一の事態に備えておくことが重要です。

禁止事項・コンプライアンス義務を含める

企業のブランドイメージと信頼性を守るため、インフルエンサーに遵守してもらうべき事項を契約書に盛り込みます。

具体的には、ステルスマーケティングを防止するため、企業案件であることを明示する「#PR」などの表記を義務付ける条項は必須です。

また、他人を誹謗中傷する内容や、公序良俗に反する内容の投稿を禁止する条項も重要です。

さらに、キャンペーン期間中に知り得た企業秘密や未公開情報を外部に漏らさないための「秘密保持義務」も必ず規定しましょう。

これらのコンプライアンスに関する条項は、企業のレピュテーションリスクを管理する上で不可欠な要素です。

まとめ

インフルエンサーのキャスティングにおける最終決定と契約は、キャンペーンの成否を左右する極めて重要なプロセスです。

まず、目的と予算を明確にして社内合意を形成し、潜在的なリスクを洗い出します。

次に、インフルエンサーと投稿内容や競合制限などの諸条件を細部まで詰め、双方の認識を一致させます。

最後に、合意したすべての事項を網羅した法的に有効な契約書を締結します。

この一連のプロセスを慎重かつ丁寧に進めることが、後のトラブルを未然に防ぎ、インフルエンサーマーケティングの効果を最大化させるための鍵となります。

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