インフルエンサーマーケティングは、多様な業界・業種で活用されるようになりましたが、ターゲットとなる顧客や取引形態、製品の特性が異なるため、同じ手法を横展開しても成果を上げられるとは限りません。BtoCでは消費者心理に寄り添ったキャンペーン設計が求められる一方、BtoBでは専門家や有識者との連携が重要になるなど、業界・業種によってポイントが変わります。
本記事では、それぞれの違いを整理し、業種別のインフルエンサーマーケティング事例や規制面での留意点について解説します。
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インフルエンサーマーケティングのBtoC vs. BtoBの違い
インフルエンサーマーケティングにおいては、BtoCとBtoBで着目すべきポイントが大きく異なります。消費者向け商品では感覚的な訴求が重要ですが、企業間取引ではロジックや専門知識が重視される傾向が強いのです。以下では、この差分を踏まえた施策の考え方を具体的に見ていきます。
消費者心理と企業間取引の着眼点の差
BtoCのマーケティングでは、購入者が個人的な趣味・関心や憧れを抱く心理的な要素が大きなウエイトを占めます。SNSでトレンドや“映え”を求める若年層から、子育て世代のライフハックニーズまで、多岐にわたる消費者心理にアプローチできるのが強みです。一方、BtoBでは企業間取引という特性上、コスト削減や生産性向上、導入リスクなど、論理的・経済的な判断軸が重視されます。
ここでインフルエンサーとなるのは、業界に精通した専門家やコンサルタント、あるいはITに詳しいエンジニアなどが多く、彼らの知見や経験が取引先の信頼獲得につながります。つまり、BtoCでは“感性”や“共感”が鍵となり、BtoBでは“理性”や“信頼”が重要になるという差が存在するのです。
プロダクト特性や導入ハードルに応じたインフルエンサー施策
BtoC商品は単価が比較的低く、購入意思決定までのプロセスが短い傾向があります。そのため、フォロワー数の多いマクロインフルエンサーや、コミュニティ性の強いマイクロインフルエンサーを起用して、トレンド感や共感を刺激する投稿を行うことで短期間の売上増加や話題化を狙いやすいでしょう。一方で、BtoB商材は導入ハードルが高く、検討期間が長期に及ぶケースも少なくありません。そのため、業界の権威やエバンジェリスト的存在との連携が有効です。
専門的なセミナーやウェビナー、ホワイトペーパーの共同作成など、コンテンツマーケティングと掛け合わせることで、潜在顧客の信頼を深め、導入リスクを払拭する説得力を持たせることができます。プロダクト特性や導入ハードルの高さに応じて、インフルエンサーをどのように活用するかは大きく変わるのがポイントです。
インフルエンサーマーケティングの業種・業界による施策事例
続いて、業種や業界ごとに異なるインフルエンサー施策の事例を取り上げます。ファッションやコスメではビジュアルを駆使したSNS戦略が有効ですが、IT・コンサルでは専門性を活かした信頼獲得、飲食・旅行では体験や口コミが重視されます。それぞれの違いを理解して最適な施策を展開しましょう。
ファッション・コスメ:ビジュアル重視のSNS戦略
ファッションやコスメ業界では、InstagramやTikTokなど、ビジュアルや動画をメインとしたSNSが特に有効です。たとえば、有名モデルやビューティ系インフルエンサーを起用し、商品レビューや着用・使用シーンをおしゃれに演出することで購買意欲を刺激できます。
さらに、UGC(User Generated Content)を誘発するキャンペーンを行い、一般ユーザーが商品を使用した写真や動画を投稿してもらうことで口コミ拡散を狙う手法も人気です。
また、ライブ配信によるメイク講座や着こなし提案など、“リアルタイム体験”を提供する施策もエンゲージメントが高まりやすく、即時の購買行動につながるケースが多く見られます。こうしたビジュアル中心のSNS戦略によって、ファッションやコスメの世界観を一気に広めることが可能です。
IT・コンサル:専門家(エバンジェリスト)との連携による信頼獲得
ITやコンサル業界では、技術や知識の専門性が高く、一般的なインフルエンサーではなく、業界の有識者やエバンジェリストとの連携が効果的です。たとえば、セミナーやウェビナーを開催し、専門家が自社ソリューションの優位性や導入メリットを解説することで、潜在顧客の信頼を獲得しやすくなります。
また、ホワイトペーパーやブログ記事など、より深い内容を発信し、検索エンジンや業界メディアとの連携を図ることで、顧客のリード獲得につなげることも可能です。
SNS上では、LinkedInやTwitter(X)で最新の技術情報や業界動向を発信する姿勢を見せると、専門家としてのブランディングが強化され、企業への信頼度も高まります。単なる広告塔としてではなく、専門家の知見をフルに活用した“共創”の姿勢を打ち出すことが成功のカギとなるでしょう。
飲食・旅行:体験型コンテンツや口コミ誘発のポイント
飲食や旅行業界では、実際の体験をいかに魅力的に伝えるかが重要です。レストランであれば、美味しそうな料理写真や店内の雰囲気をリアルに伝える動画、旅行であれば宿泊施設や観光スポットでの体験談を撮影してもらうことで、ユーザーの興味を引きつけます。
この際、“行ってみたい”“食べてみたい”という気持ちを刺激し、口コミを誘発する仕掛けが鍵となります。具体的には、ハッシュタグキャンペーンやチェックイン時の特典を用意してSNS投稿を促すなど、ユーザー参加型の企画を行うと拡散力が高まります。
インフルエンサーには、食通や旅の達人など“信頼できる目線”を求めるユーザーが集まりやすいため、彼らの体験談を通じてリアルで生き生きとした情報を届けることで、ブランドや施設のイメージ向上や集客効果を高めることができます。
規制・ガイドラインへの対応
業種によっては、医薬品や化粧品、景品表示法などの法律・ガイドラインに沿った情報発信が求められます。違反すると行政処分や炎上リスクが高まるため、インフルエンサー施策を進める際には法令順守のチェック体制を整え、安全なキャンペーン運営を実施することが不可欠です。
薬機法や景品表示法など、業界固有のルールがある場合の留意点
医薬品や医薬部外品、化粧品を扱う場合、薬機法や景品表示法など、特有の規制に注意しなければなりません。たとえば、薬機法では実際に承認されていない効能や効果をうたうのが禁止されており、インフルエンサーが事実と異なる表現を使ってしまうと、企業側も責任を問われる可能性があります。
景品表示法も、誇大広告や過度な割引表示に関する規定が厳しく、違反が発覚すると行政処分を受けるリスクがあるのです。こうした業界固有のルールを把握するためには、事前に法務部や専門家と連携し、インフルエンサーへのガイドラインを明確に示すことが必要です。コンプライアンスを徹底することで、ユーザーの信頼を守りながら安全に施策を展開できます。
海外展開時のローカル規制とインフルエンサー選定
海外市場へインフルエンサーマーケティングを展開する場合、対象国・地域の広告規制やプラットフォームルールを理解し、現地のユーザー文化に合ったインフルエンサーを選ぶ必要があります。たとえば、欧米圏の企業やインフルエンサーは広告表記や契約面のルールが厳格化されており、日本とは異なる基準で運用される場合があります。
また、アジア各国でもSNSの利用状況や流行が異なるため、国によってはInstagramよりもTikTokや独自のプラットフォーム(中国の小红书など)が主流になるケースがあります。さらに、言語や宗教・文化的背景によって受け止め方が変わるため、誤解や反感を招かないよう、ローカルに根ざしたインフルエンサーと協力し、キャンペーンの内容をしっかりとローカライズすることが成功への近道です。
まとめ
インフルエンサーマーケティングを業種・業界に合わせて最適化するには、消費者向けの商品か企業向けのサービスかといった大きな枠組みに加え、製品特性や文化的背景、さらに法令・ガイドラインへの適合性など、多様な要素を見極める必要があります。ファッション・コスメなら視覚的な訴求、IT・コンサルなら専門家との連携、飲食・旅行なら体験を重視するなど、業界ごとに求められる施策や表現方法が異なるのが特徴です。
また、薬機法や景品表示法、海外の広告規制など、法令順守を徹底することでブランドの信頼を守りつつ、ローカル市場への適応を進めることが求められます。自社の商品やサービスの特性を正しく理解し、それに見合ったインフルエンサー活用を設計することで、より高い成果を得られるインフルエンサーマーケティングが実現できるでしょう。